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ラグビーワールドカップと安保国会 TMOと武士の情け [スポーツ理論・スポーツ批評]

TMOと武士の情け。

ラグビーワールドカップ イングランド大会が昨夜始まった。
開幕戦は開催国かつ優勝候補の一角イングランド対フィジー。フィジーはときどき大番狂わせを起こす曲者なので、開幕戦で開催国を食うのではないかという期待感(イングランド地元ファンとすれば嫌な予感)を孕みつつ、ゲームはスタート。イングランドが着実に点を重ね前半25分を過ぎ15-0。このまま一方的になるかと思われた27分過ぎ、フィジーの快速スクラムハーフが自陣センターライン付近でのスクラムが回転してボールがスクラム外に出た瞬間、ボールをつかんで走りだし、ライン際に飛び込む。イングランドバックス二人がタックルしてからみつくも、雨に濡れた芝を利用し、すへり混みながら、バスケットのダンクシュートのようにゴールライン上にボールを叩きつけ、見事なトライ。レフリーも走って追いかけながら、遠目には明らかなトライだったので、右手を上げトライを宣言。盛り上がる場内にはリプレーが流れる。が、しかしアップでトライシーンを撮った映像が流れると、ダンクシュートのように片手で地面にボールを叩きつけようとする直前、ボールが手から離れている。つまりノッコンである可能性が高い。その映像を見た主審、いったんトライを宣言したにも関わらず、TMOを要求。結局ノッコンでノートライになった。その後もフィジーは流れをつかみきれず、終盤イングランドの連続トライをゆるし、33対11と、実力差通りの結果に終わった。
 開幕第三戦はアイルランド対カナダ。カナダはかなり格下で、アイルランドは今年のシックスネーション優勝北半球王者で優勝候補の一角。前半終了間際まで29-0と一方的にリード。40分を過ぎ前半ロスタイム、やっとアイルランドゴール前まで攻め込んだカナダ、ゴールポスト下あたりから左サイドにボールを展開するロングパスが飛ぶ。スクラムハーフ日系人ヒラヤマがボールをキャッチする前にアイルランドディフェンスが詰めてくると見るや、ヒラヤマはタックルされる前に飛んでくるボールを直接タップしてライン際でフリーになっていた俊足ウィングにボールを送る。転がったボールを拾ったウィングが見事にトライ。したかに見えた。しかしここで主審が、タップパスがスローフォワードでないか(前に飛ばしていれば、タップだからノッコンにあたるのかも)をTMOで確認。結局スローフォワードでノートライになつた。

このふたつの幻のトライ、TMOがなかった時代なら、確実にトライだったと思う。ちょっと怪しいかなと思っても、格下劣勢のチームが、がんばりにがんばって上げたトライは、試合の流れに審判も乗っかって「トライにしよう」という文化がラグビーにはあったと思う。フランスワールドカップで地元フランスがニュージーランドを破ったときの逆転トライは、明らかにスローフォワードだったけれど、「会場の雰囲気」がトライにしてしまった、という事件も起きた。

 TMOは明らかに誤審を減少させた。判官ひいき、地元ひいき判定はでにくくなった。
ラグビーはもともとサッカーなどと比べると、実力差がはっきりと点に出やすい、番狂わせが起きにくいスポーツだ。実力差がちょっとあるだけで、弱者はワントライをとることさえ難しくなる。日本代表も強豪国相手に100点近い差をつけられて負けることはあったし、高校ラグビーなどでもそういう悲劇はよく起きる。そんな中で「武士の情け」トライは、試合の雰囲気を救うラグビー文化のひとつだったと思う。しかしTMOの導入により、公正さは増したことは間違いないのだが、「武士の情け」トライが撲滅されてしまったことで、ラグビーは「強者が必ず勝ち、弱者は「一矢報いる」トライを誇りに持ち帰る、ということさえも許されない、冷酷なものになりつつある。

 ワールドカップ開幕のわずか一時間ほど前、日本では安保法制が可決する直前、最後の抵抗を試みる民主党福山議員は、参議院本会議で、一人15分と制限された時間を超えて演説を続けた。それに対し与党議員から「時間を守れ」「ルールを守れ」とたびたびヤジが飛んだ。福山議員は、より大きなルール違反を指摘して抵抗しつつ、たびたび「君たちには武士の情けはないのか」と叫んだ。

 圧倒的数の差の中で、弱者少数派が声を枯らして訴えているのだ。法案が可決されるという勝敗はすでに決っている中で弱者少数派が最後の訴えをしてるのだから、時間制限というルールを多少曲げても、最後まで意見を聞くという「武士の情け」はないのかと訴える。

 武士の情けというのはつまり、「弱者に対してはルールの適用を甘くする」ということなのだ。ルールの適用を強者にも弱者にも公平にすることが、本当に公平なことなのか。

 高校ラグビー花園大会では、強者の前に100点差をつけられてしまうようなゲームも起きるので、武士の情けトライはあってもよいような気がする。しかし、そうした曖昧さを許すと、大会も終盤を迎えたところで「強者同士のシビアな争い」の中で、地元関西勢にほんのすこし有利に笛が吹かれる「関西の笛」問題が許容されてしまう、という問題が起きる。

 政治においてはMajority rules,Minority rights=多数決の原理は、少数者権利の尊重とともに行う、という原則がある。民主党があそこまでの「少数派」になってしまっていること、「武士の情け」を請わねばならない状況について考えつつ、さて、これから始まる南アフリカ対日本を応援することにしよう。

 武士の情けトライを期待しなければならないような一方的展開になる可能性はかなり高いと思う。そんなこととは無関係に、南アを追い詰めるような試合ができるのだろうか。


追記

なーんてぶろぐ書いた後、日本、堂々と勝ちましたー。判定も日本びいきなんてところ、ひとつもない、まったく初めから堂々と互角に戦い、判定も公正、むしろ日本のモールのトライかどうかが認められず、なんてことまであったのに勝ちました。日本代表のみんさん、エディーさん、゜コテンパンにやられる可能性が高い」なんて失礼なこと書いてごめんなさい。南アを追い詰める上に、最後に勝ちました。南アの選手、監督、そしてスタジアムの南ア観客の青ざめて凍りついたような表情が、今日の日本が本当に強かったことを雄弁に物語っていました。予想が外れて超幸せです。
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kenrisa

民主主義において、「多数決の原理」は原理とはいえ最終的な「手段」だと思っていて、僕も「少数者意見の権利の尊重」がちゃんと図られるべきだと思います。
そもそも、独裁的な権力者の横暴や暴走を防ぐために、人類は何らかの「歯止め」的システムを作ってきた歴史があります。
ちねみに、大昔から「三人寄れば文殊の知恵」という諺があるように、何人かの合議による決定の方が、より善い道へ進むという考え方がありますが、それはさておき…。
人間には「欲」というものがあって、時にその欲が善くない方向へ向かってしまうことがあります。だから、権力者の権力行使に対して、合議というシステムを入れることで、多少ともブレーキがかかる仕組みを考えました。一般企業に当てはめると、会社法という法律で「取締役会という会議体の設置」を義務化(大会社)しており、公開会社については当該企業と利害関係のない社外取締役(あるいは監査等委員取締役)が求められています。最終的には多数決(過半数の賛成)でモノゴトを決めるんだけど、それでも、暴走や不正に対する牽制機能を持たせようとしています。実態としてちゃんと機能しているかどうかは何とも言えませんが…。
日本の政治の世界では、2つの会議体でモノゴトを議論して決めていくというシステムが採用されていますが、最終的な決定手段はやはり多数決なわけで、何となく「民主主義=数の論理」という雰囲気になっている気がします。まさに「少数意見の尊重」という言葉は薄れ、少数の人たちが「武士の情けはないのか」と叫ぶ状況になっていますよね。間接民主制(議会制民主主義)はという制度を採っているいるからには、その長所である「実質的な議論」が重視されるべきであり、また様々な民意の代弁者である議員の主張も真摯にきくのが前提ではないかと思われます。建前論ではありますが、「いろんな意見を取り入れて合意形成をしていく」という在り方が薄れている感じがあります。
また、間接民主制は選挙ルールが民意反映特性に影響を与えるので、本来であれば選挙ルールの妥当性の検討も必要ですよね。
さらに日本では、権力行使のチェックという名目で、「三権分立」というシステムも採られています。もちろん、状況によってチェック基準が微妙に変わることもあるかもしれませんが、その基準は憲法とされているわけで、そのあたりのことも今回はいろいろと考えさせられました。
ということで南ア戦の勝利は素晴らしいことでしたね。


by kenrisa (2015-09-26 22:15) 

うぉたぷらねっと

政治のことをあれこれ考えることと、スポーツに熱中することが、同時期に起きると、そのふたつの関係はって、本当はあんまり関係ないはずなんだけど、考えてしまいます。スポーツを心から楽しめる平和な世界を実現するには、スポーツに熱中している暇はない、という矛盾。むむむ。
by うぉたぷらねっと (2015-09-28 14:08) 

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